N360系の別体式ブレーキブースターは国内仕様では空冷Z360 GSグレードのディスクブレーキ仕様とN600にしか付いていませんでした。このブレーキブースター不良品をダメ元で良いから治れば良いな、というご依頼を受けお預かりしてたのを着手しました。このブースター・・・うちのZにもかつて付いていましたが買ったときにすでに配管が外されていて、無くとも踏めば効いてたので外して捨ててしまいましたっけ。(遥か30年以上前・・・・)
当時のパーツリスト見ても部品としてはブースターAssyで細かいパーツ設定が有りません。(#15) これじゃ構造も判りませんね。
んじゃ輸出仕様のN600はどうでしょう?海外サイトで見てみると・・・有りました。#2のタイプですね。
とりあえず部品構造は判りましたが、部品番号で調べても純正部品は予想通り国内はもちろん海外でも入手できません。
先ずは負圧ホース接続部分に近い小さな方のダイアフラムを分解しましたが、見た目では大きな問題はなさそうです。
次にマスターからピストンを外すと、中は割ときれいです。しかしよく見るとカップがワカメみたいに成っていて、ブースタープレート入口に乾いたブレーキフリュードが付いています。おそらくこいつから漏れたのが不具合の原因かと・・・・
測ると右から太い方が約22.9㎜、真ん中が約19㎜、細い方が約14.3㎜・・・・7/8インチ、3/4インチと9/16インチのカップですね。
さて、交換するにもそもそもブースタープレートに刺さっているピストンロッドが動きません・・・・固着しています。フリュードが回ってしまったからでしょう。
しばし奮闘・・・・どうにか外れました。
ダイアフラムの内側は黄色いフリュード?のカスが溜まってましたわ。ダイアフラムのゴムは問題ないようです。
パーツ洗浄の準備を始めます。最初にばらした小さなダイヤフラムが押してる部品を外します。パーツリストを見るとリレーピストンというのを押してるようです。(N600のパーツリスト#10)
出入口を塞いでエアで圧力を掛けますがびくともせず。むむむ、これも固着してました。
反対側から押すことも出来ないので、結局ピストンの真ん中に小さな穴を掘って、エキストラクターで回して引き出しました。
さてこのピストンにもカップが付いていますが、これが直径10㎜・・・・何回測ってもインチじゃないですね。11㎜のカップはバイクのブレーキマスターで見たこと有りますが、10㎜は聞いたこと無いです。
さあて、カップ捜索します。この間にパーツ洗浄と、ダイアフラムのカバーの底部分がサビていたので取り付けステーと共にブラストし、メッキはしなくて良いですとの事でしたのでカバーはジンクスプレーで塗装しておきます。
カップ径頼りで発注してみた物が入荷してきました。国産車用でそれぞれのサイズのドラムブレーキカップ入手。9/16は問題なく装着出来ましたが、3/4は買ったものが内径が小いさいのと厚すぎて装着できず。
どうしたもんかなぁと色々調査している時に、近所の
ガレージ66の方が別件で来訪。こんなの無いかなぁと相談したら、試しにとランドローバー用の3/4のカップを持ってきて来てくれました。なんとこれがぴったんこ♪
7/8インチのカップも国産車ドラムブレーキ用が使えたので装着。
このロッドを入れ忘れない様(備忘録)、Oリングも新調して大きなダイアフラムとマスター側が完成。これでダイアフラム中心のシャフトを手で引っ張ると前後に動きます。
10mmのカップの方はまだゴムも柔らかく、見つからなかったら再利用と考えていました。ところが、バイク用フロントマスターシリンダーのリペアキットの中に10㎜を発見し、発注。
内径も問題無さそうでしたのでこれに交換。もう一つのパッキンは特殊な形状でカップ形でないので洗浄してそのまま再利用。
小ネジとホースは新品にしました。
マニホールドからの負圧ホースも新品に換えますが、サービスマニュアルによるとホース根元にはチェックバルブが付いているとの事。単なるホースニップルじゃありませんでした。ここのチェック方法は「バキュームホースの吸気マニホールド側を外し、口で吸ってエンジン側から吸ったときは吸えて逆に空気を吹きこんだ時は、空気が吹込めなければよい」と有ります。やってみると・・・微妙です。分解してみます。
右のゴムバルブが横になってました。それじゃ抜けますわな。洗浄して正しく組み立て。
さて、物は完成したのでこんな評価系を作ってみます。バイクのセパレートハンドル毎外したブレーキマスター、ディスクの代わりに板を挟んだキャリパー、負圧作成用掃除機、そして評価物のブレーキブースター。
このブレーキ系のエア抜きをしますが、マスター径が小さいためか難儀します。
早速試験。ブレーキレバーを握って、負圧を掛けるとレバーが軽くなるはずです。掃除機のスイッチを入れると・・・・んん?微妙。
そこで掃除機の負圧が足りないのではと調べます。
あら、マニュアルによるとアクセル調整して300mmHgの負圧で試験しろと有りますが、100mmHg切ってますね。他の掃除機で試してもこんな感じなので、ファンで作る負圧の限界ですかね。先に調べておけよって事ですよ。負圧作成方法変更です。
車載用エアポンプのDC電源を逆にかければ負圧?と思ってやってみましたが、レシプロ式だとモーターが逆転しても正転と同様にピストンが上下しバルブがリードバルブなので正圧だったり・・・負圧を作るのに悩みます。
大きい方のダイアフラムと同じようなあれ・・・トイレ詰まりを取るラバーカップを改造して負圧を作れないかと100円ショップに見に行くと、他に使えそうなこんなの発見。200円ですけど・・・
単体で500mmHgの負圧が出ること確認して、ニップル取り付け加工して負圧ホースに接続・・・
これで圧力は低く出来ますが、大きなダイアフラムを引くには何回かポンピングが必要です。
そして試験再開。ブレーキレバーを握ってポンプを引くとレバーが軽くなるはずですが、何回かポンピングが必要で一人だと手が足りません。そこでブースターに負圧を与えた状態でブレーキを握った時と、負圧が抜けたときの握力差をバネばかりで計測することを考えましたが、今度はバネばかりが5kgの物しかなくそれ以上の握力計測が必要で役不足。
結局定量的でなく感覚に成ってしまいますが、最初にポンプでブースターを負圧にして、その後何回かレバーを操作します。するとだんだん負圧が抜けてきて同じ握力で握ってもレバーの動作しろが小さくなる事で動作確認しました。
感覚的には効いています。
ステッカー貼りなおしてひとまず終了。